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科学研究費補助金基盤研究B「日米における政教分離の起源と展開」

研究業績 2011年度(平成23年度)

研究実績の概要

 研究期間3年目である平成23年度(2011年度)は、昨年度末に実施した研究合宿の際、研究代表者である和田が提出したペーパー「本プロジェクトの前提(継承と発展方向)」をもとにした共同討議による研究全体の方向性の確認を受けて、各自の役割分担に沿った研究を進めた。
 その成果を確認し、共有すべく共同研究会を実施した。

(1)共同研究会 2011年9月16日 於:大東文化大学板橋キャンパス2号館政治学科研究スペース
・五味俊樹 「ユニバーサリズム、インターナショナリズム、そしてパトリオティズムの関係 -新渡戸稲造とその周辺に位置する人々の心象を素材にして」
 本報告においては日米における政教分離問題について1924年の「排日移民法」をめぐる問題を中心に検討した。

・和田守 「自由民権と戦後民主主義 -民権憲法草案をめぐって-」
 本報告においては大日本帝国憲法(明治憲法)制定過程における私擬憲法草案と戦後の日本国憲法制定期における憲法研究会「憲法草案要綱」を中心に制憲議会と国民の権利問題について検討した。

(2)関連研究会(「大正・昭和期の日本政治」研究会) 2012年2月11日 於:大阪商業大学研究棟 ミーティングルーム
・五味俊樹「新渡戸稲造と矢内原忠雄における国際関係観 -植民地政策論を手掛かりとして-」
 本報告においては新渡戸とその植民地政策論の後継者矢内原忠雄を取り上げ、植民地論の根底にある文明論の問題性と人種の序列化を伴う道徳観念などについて検討した

・和田守「民衆の時代と実業精神」
 本報告においては「民衆の時代」といわれる大正デモクラシー期における武藤山治の「実業精神」を手がかりに、近代日本における政治と実業、国民生活と実業観念、実業精神の内面性と社会道徳の関係など市民的自由の態様を検討した。

(3)研究共同合宿 2012年2月11日〜12日 於:静岡県熱海市ニューフジヤホテル
・加藤普章「カナダにおける国家と宗教の関係」
 本報告においては英国とも米国とも異なるカナダの教育制度や法制度の特色を前提にした宗教と憲法の関係、多文化主義と信教の自由に関する憲法論議について検討した。

・大西直樹「アメリカ・ニューピューリタリズム再考」
 本報告においては、海外研究者デイビット・ホール教授の近著“A Reforming People”を手がかりにアメリカ・ピューリタニズムの歴史性と検証視角の多義性について再考の必要性を検討した。

・千葉眞「『政治理論における『宗教と政治』の現在-R・ローティ、J・カサノヴァ、J・ロールズ、C・テイラーなど」
 本報告においては、近年の欧米政治理論研究で活発化している公共領域における宗教の位置づけと役割についての所説を検討し、伝統的な「世俗化論」との関係を考究した。

・和田守「政教分離と仏教」
 本報告においては「日本型政教分離」といわれる国家神道体制成立過程での仏教会の対応を検討した。国民生活に定着していた伝統的な仏教界が近代国家と宗教の関係、神道やキリスト教との確執をとおしての「宗制」「寺法」の整備の問題点について考察した。

(4)その他
 小倉いずみ「コネチカットとマサチューセッツにおける政治と宗教」、佐々木弘道「合衆国憲法の宗教条項に関する判例と学説」をはじめ各自の研究役割について進捗状況を報告し、全体的再調整を行うとともに次年度研究計画について確認した。
 なお、和田は2011年8月27日〜9月2日、「アメリカにおける日系移民の実態と宗教問題についての調査」のためアメリ合衆国・ロサンゼルスとサンフランシスコに海外出張し、その成果について9月16日開催の研究会で報告した。

研究発表

@和田守「自由民権と戦後民主主義」『静岡県近代史研究』第36号、2011年、1-25頁。

A和田守「服部綾雄の墓碑-日本人移民・日系アメリカ人のアイデンティティーをめぐって」(1)(2)(3)『静岡県近代史研究会報』第398号、2011年、6-7頁、第399号、2011年、3-4頁、第400号、2012年、6-7頁。

B和田守「木下尚江の普選論と平和論-帝王神権国体への挑戦」(日本ピューリタリズム学会第6回研究大会、2011年6月17日、於聖学院大学、シンポジウム報告要旨)、『ピューリタリズム研究』第6号、2012年、9-11頁。

C和田守「『坂の上の雲』と明治の日本」新潟県立図書館招待講演、2011年11月5日、新潟県立図書館。

DMakoto Chiba(千葉眞), 'On Perspective on Peace: The Hebraic Idea of Peace and Prince Shotoku's Idea of Wa' in "Building New Pathways to Peace" eds. Noriko Kawamura, Yoichiro Murakami, and Shin Chiba, The University of Washington Press, 2011, pp.48-64.

D千葉眞「終末論」、古賀啓太編『政治的概念の歴史的展開』第4巻、晃洋書房、2011年、207-241頁。

E千葉眞「アーレント政治思想の展開と著作紹介」、ハンナ・アーレント著、千葉眞訳『アウグスティヌスの愛の概念』(再版)、みすず書房、2012年、263-297頁。

F大西直樹‘Emily Dickinson Knew How to Suffer’in “Bulletin”(The Emily Dickinson International Society)、2011年、pp.4-6

G大西直樹『空よりも広く』、マッケンジー、ダナ共編、大西直樹訳、彩流社、2012年

H小倉いずみ「トマス・フッカーの生涯とコネチカット植民地」日本アメリカ文学会東京支部例会報告、2011年9月24日、慶應義塾大学

I佐々木弘通「第9条」『別冊法学セミナー 新基本法コンメンタール憲法』210号、2011年、145-159頁

J五味俊樹「新渡戸稲造と矢内原忠雄における国際関係観―植民政策論を手掛かりにしてー」國際比較政治研究所研究会報告、2012年2月11日、大阪商業大学

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